投函者(三井千絵)

2025AGM1

例年にない寒暖差の激しい3月に、12月決算企業の株主総会が開催された

昨年に続き、今年も株主総会の動向を共有していきます

 

2025年早くも3か月たち、3月総会の企業が株主総会を開催した。ルネサスは今年はじめて完全オンライン株主総会を開催したようだ。3月25日にエキサイトHDが発表したリリースによると、2024年は60社ほどがバーチャルオンリーの株主総会を開催し、そのうち31社がエキサイトの提供するプラットホームを利用したそうだ。

株主総会がオンラインのみで開催されることは必ずしも良いというわけではないが、せめてハイブリッド方式は取り入れてほしいと思う。そのほうが議論により多くの株主が参加できる。最近の株主総会は、個人株主の奮闘により、非常に重要な、深く考えるべき質問がなされている。そしてこの3月総会では、ある会社で個人と思われる株主から、経営を問う株主提案も提出された。

 

その投資計画、詳細は?

電通総研は3月24日に株主総会を実施し、株主はオンラインで視聴することができた。あらかじめ編集したビデオによる事業報告が終わると、会場から株主質問を受け付けた。業績もよく満足していると言い添えながら、人的資本などの取り組みについて問うフレンドリーな質問もあった。しかしある株主は「3年間で750億円も投資計画にあてるというが詳細はどうなっているのか?」とその投資対象や時間軸について質問した。また別の株主は「Vision2030では2030までに売り上げを3000億にというが少し野心的ではないか。(現在1500億円)どのようにそれを達成するつもりなのか?」と具体的な説明を求めた。

株主総会における今後の経営計画についての説明は、いまや機関投資家との対話の時と変わらない精緻さが求められているかもしれない。

 

株主優待への熱い思い。会社はそれでも廃止を選択

3月26日はアサヒグループHDの株主総会が開催された。こちらもライブ配信を実施し、アーカイブも提供している。今年は販売単価も数量も向上させたこと、低アル/ノンアル領域での事業拡大、ペットボトル問題、酵母や乳酸菌で新規事業開拓などを力強く説明し、財務健全化に向けた数年越しの目標を今年達成したこと、今後配当による株主還元に力を入れること、またガバナンスにおいては委員会設置会社に移行し、監督と執行を分離、独立取締役から議長を選ぶと述べた。

株主からの事前質問のトップ、そして会場質問のいくつかは、今年アサヒが決断した株主優待の廃止だった。多くの株主は「株主スペシャル」のビールを楽しみにしていたのだろう。しかし会社側はすべての株主に平等に応えていくためにこれを廃止し、今後は配当を高めるなどして還元していくときっぱりと回答した。

しかしある株主は優待よりもその株主還元について意見した。食品業界ではライバルたちはもっと配当性向が高いと、高みを目指すよう強く求めた。

 

経営判断の問題と株主軽視を問う株主提案

4期連続赤字のKlabの株主総会は327日に六本木ヒルズの自社オフィスで開催された。KLabはある株主から、社長解任の株主提案を受け取っていた。事前投票で決着がつかず、入室する株主は投票用紙をあらためて渡された。

提案者は自らを「自分は(ゲームの)ファンで長く株を保有している」と自己紹介した。そして提案理由として、現在3年ごしでリリースが遅れているゲーム開発に対する経営判断の問題、また度重なるリリース延期などについて株主への説明が十分になされていないこと、そしてこの間の資金調達に対する懸念などをあげた。まっとうな理由といえる。これに対し経営者も、開発中のゲームの状況を細かく述べ、今ここで投げ出しても何も得られないとやはり真剣に訴えた。事前に寄せられた多くの質問を分類し、他の主要ゲームの進捗や資金調達の状況なども詳細に説明した。

最後に創業者が発言をした。提案者の意見が胸に響いたことを正直に述べ、今までの延長線上では改善できないと自分も思う、ただ我々のとれる手段は多くない、最善の策は何なのか、と自らに問うかのように語った。

この言葉は、同時に出席した株主への問いでもある。企業の将来をともに考え議決権行使をするという株主としての責任を、今一度感じさせた。

 

株主総会と企業の未来

その翌日3月28日、キヤノンが株主総会を開催した。本社は都心から遠く、参加は簡単ではないが、いまだハイブリッドも、オンライン視聴も導入していない。せめてオンライン視聴を導入すればより多くの株主がそれを見て経営者の声を聞き、他の株主の視点を知ることができる。これに対し会社側が真剣に回答すればそれも共有できる。

ところで、昨年から金融庁では有価証券報告書の株主総会前開示の議論が進められている。3月28日には全企業に対する金融担当大臣からの要請も金融庁HPに公表された。株主総会で前述のような経営をめぐる様々な議論が行われるのであれば、有価証券報告書が総会前に株主に提供されることの意義は、株主だけでなく企業にとっても理解できるのではないだろうか。

株主が求める真剣な説明は、たとえその大半が個人であっても、機関投資家よりずっと長く保有していたり、商品やサービスのファンである場合が多いことから、機関投資家とのそれに決して劣ることなく重要だ。株主総会における株主との対話を、経営に対する真摯な意見をしてくれる相手として大事にし、企業価値向上に役立てほしいと思う。