(投稿者:空中遺跡)「委託者指図型投資信託の委託者たる運用会社は、名義株主でなくても、名義株主の代理人として株主総会に出席することが現行法においても許容されている」ことを、皆さんはご存じでしょうか。
私自身はこの点について、恥ずかしながらつい最近まで知りませんでした。投信で保有する株式の名義株主は受託者たる受託銀行であることから、現行法においては、委託者たる資産運用会社は株主総会には出席できないものと思っておりました。
ですが、『商事法務』2015年12月25日号掲載の永池正孝、武井一浩、森田多恵子の各氏による共同執筆論文『「グローバルな機関投資家等の株主総会への出席に関するガイドライン」の解説』(以下、「本論文」といいます)の中でその点について触れられており、大変驚き、この点については関係者の中でも意外と知られていないことではないかと思ったことが、本稿執筆のきっかけです。
まず、全国株懇連合会が2015年11月13日に策定・公表した「グローバルな機関投資家等の株主総会への出席に関するガイドライン」(以下、「本ガイドライン」といいます)については、各種報道等で取り上げられていたことから目にした方も多かったかと思われます。
ただ、「グローバルな機関投資家等」というタイトルであることから、海外の機関投資家向けのガイドラインと思って、国内機関投資家の方で見過ごしてしまった方もいるのではないでしょうか。
私自身も当初は、海外の機関投資家が日本の株主総会に出席するためのガイドラインかと思っておりましたが、たまたま本論文を読み、本ガイドラインは国内・海外いずれの機関投資家も対象としているものと知りました。
さて、本論文では「投資信託及び投資法人に関する法律(以下、「投信法」といいます)10条の適用を受ける委託者指図型投資信託の委託会社は、名義株主でなくても、名義株主の代理人として、株主総会に出席することが許容されていると一般に解されている」、とあります。
上場企業が定款において「株主は、当会社の議決権を有する他の株主1名を代理人として、その議決権を行使することができる。」と定めていたとしても、投信法上の委託者たる運用会社が名義株主(受託銀行)から代理人としての委任を受けた場合には、株主総会に出席することが可能とのこと。
代理人としての出席であることから、株主総会の場での発言・質問等も当然に行うことが可能と思われます。
投信の委託者による株主総会出席については、本ガイドラインにおいても上記と同様の解説が記載されていて(第一部、Ⅳ、ルートC、(特徴))、法的根拠に関する説明については、本ガイドラインの方が詳細です。
また、実際に投信の委託者が株主総会に出席する際の手続きについては、本ガイドライン「第二部 グローバル機関投資家等の株主総会出席についての実務要領」をご参照下さい。
上場企業、受託銀行そして運用会社においても、本手続きに不慣れであったりすることから、十分に時間的余裕をもって対応することが望ましいと思われます。
委託者たる運用会社が株主総会に実際に出席した事例は、私は寡聞にして存じませんが、本ガイドライン等を契機として、運用会社による株主総会への出席が活発化し、ひいては日本経済の発展につながることを願っております。
<参考URL>
「グローバルな機関投資家等の株主総会への出席に関するガイドライン」
http://www.kabukon.tokyo/data/guidelines.html