投函者(三井千絵)
この春コーポレートガバナンス・アクションプログラムが発表され、これまで以上に企業と投資家の対話の重要性が議論されているが、最近実は対話の相手はAIなのではないかと思っている。
冗談のように聞こえるかもしれないが、このように考えてのことだ。
投資家側は投資方針や議決権行使基準にのっとって、企業に働きかける。企業の開示をみて、問題のある所を特定し、エンゲージメントでそれを正すよう対話する。この作業は遅かれ早かれ何らかの形でAIのサポートを受けることになるだろう。また企業は投資家に自社の状況や戦略を説明する。どのように説明をしたら効率的に理解されるか、どのように開示をすればよいかやはりAIのサポートを受けるようになるだろう。もしかして近い将来、AIとAIで対話をしていた、ということになるのではないだろうか。
ChatGPT登場
2023年7月、Edgeで動作するBingのチャット機能に、「現在の規制強化やアンチESGの影響で、どれぐらいESG投資額は減っているか」という質問を投げてみた。すると、面白い答えが返ってきた。(検索日2023年8月11日)
私の検索結果によると、ESG投資額は、グリーンウオッシュに対する規制や監督が強化されているにもかかわらず、増加傾向にあるようです23。例えば、日本では2022年3月末に金融庁がESG投信に関する監督指針を改正し、グリーンウオッシュの防止を図っています2。また、欧州では2020年6月にサステナブル投資に関するEUタクソノミーが法制化され、金融機関に広範な開示を求めています2。
これらの動きは、ESG投資の透明性や信頼性を高めることで、投資家のニーズに応えようとするものと考えられます。ESG投資は、単なるブランド化の手段ではなく、社会的・環境的課題の解決に貢献することを目指すものです1。
前半と後半はややチグハグだが、言っていることは妙に筋が通っている。
同じ質問をChatGPTに入力してみると(検索日2023年8月25日)
2021年9月時点では、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資に対する規制強化やアンチESGの影響についての具体的な数値やデータは私のデータベースには含まれていません。ESG投資の状況やトレンドは常に変動しており、特定の期間における投資額の増減については、公式な統計データや金融市場の報道を確認することが必要です。
ESG投資に関する最新の情報や影響について知りたい場合は、金融機関、投資家向けのレポート、ESG関連のニュース、専門家のコメントなどを参考にすることをおすすめします。市場の状況は変動するため、最新の情報を得ることが重要です。
と、とてもそっけない答えだった。
AIとは何か
しかしこの結果を見ていると、どうも単なる検索結果にしか思えない。AIというのはいったい何だろう。
AIと呼ばれている部分はアルゴリズムによって答えを出す。しかしそのアルゴリズムは過去の情報を基に処理される。だから適切な情報がなければ、答えを出すことはできない。人が記憶に留めながら見ることができないほどの量の情報を、一瞬で縦に横に検索し、相関をみつけ答えをだしている・・・それが今我々が手にできる”AI”というところではないだろうか。
それでもチャットGPTやBingとは尽きることなく対話できる。それはニンゲンが見落としたり、固定観念をもったために誤解していたりする点を指摘してくれる。また感情的にもならず、淡々と論点を整理してくれる。
「もしPBRが1以下であるとき、経営者はどうするべきでしょうか」
この質問にChatGPTはこんな答えを返した(2023年8月25日検索)
PBR(Price-to-Book Ratio)は、企業の株価をその純資産簿価で割った比率を示す指標です。PBRが1以下である場合、株価が実質的にその企業の純資産の簿価よりも低いことを意味します。このような状況では、経営者はいくつかの行動を検討することがあります。
以下に、PBRが1以下の場合に経営者が考慮すべきアクションの一部を挙げてみましょう:
- 企業価値の評価: PBRが1以下となることは、市場がその企業の実質的な資産価値を十分に評価していない可能性を示唆します。経営者は、企業の資産や事業価値を再評価し、投資家に適切な情報を提供することが重要です。
- コミュニケーションと透明性: 経営者は企業の戦略や将来の見通しについて透明性を持ってコミュニケーションを行うことで、投資家の信頼を高めることができます。市場に対して企業の成長や価値向上に向けた計画を示すことが重要です。
- 効率的な資本配分: PBRが低い場合、企業が自社の資本を効果的に活用しているかどうかを検討することが重要です。効率的な資本配分や運用を行うことで、企業の価値を最大化することができます。
- 戦略の見直し: PBRが低い場合、市場が企業の成長や収益性に懸念を抱いている可能性があります。経営者は事業戦略を見直し、収益性の向上や競争力の強化を図ることを考慮するべきです。
- 投資家対話の重要性: PBRが低い場合、投資家との対話が重要です。経営者は投資家の懸念や期待に耳を傾け、企業の価値を説明し、長期的な投資を奨励する情報を提供することが求められます。
注意すべきことは、PBRが1以下という数字だけで判断するのではなく、その背後にある理由や企業の状況をよく分析することです。経営者は市場環境や企業の特有の事情に基づいて適切な対策を検討する必要があります。
ニンゲンに言われたら腹が立つことも、素直に聞けるかもしれない。
「投資先企業のPBRが1を下回っていた時、投資家はどうするべきでしょうか」
このような質問にChatGPTはこう答えた。
投資家が企業のPBRが1を下回っている場合、それだけの情報だけで判断するのは避けるべきです。PBRは一つの指標であり、他の要因やデータと組み合わせて評価することが重要です。以下に、投資家がPBRが1を下回っている企業に対するアプローチを考える際の一般的なガイドラインを示します。
- 基本的な分析: PBRは企業の株価を簿価で割ったものですが、企業の実態や将来の収益性に対する影響を十分に反映しないことがあります。投資家は他の指標やデータ(収益性、成長率、競争力など)を併せて分析し、総合的な評価を行うべきです。
- 業界と競合他社との比較: PBRの適正な水準は業界や競合他社の状況によって異なります。同じ業界内での比較や競合他社のPBRと比較することで、企業の評価が適切かどうかを判断できます。
- 業績と将来展望: PBRが低い場合、市場がその企業に対して懸念を持っている可能性があります。投資家は企業の業績や将来の展望に注意を払い、収益成長や業界での地位向上の可能性を評価するべきです。
- 資産の評価: PBRが低い場合、企業の実態に対する市場の評価が低いことを示すかもしれません。投資家は企業の資産(特に非財務資産やブランド価値)の評価や将来のキャッシュフローの見通しを考慮することが重要です。
- リスクとリワードのバランス: PBRが低いからと言って、すぐに投資を回避する必要はありません。リスクとリワードのバランスを考慮し、企業の成長や価値向上の可能性を検討することが大切です。
- 投資の目的とタイムホライゾン: 投資の目的やタイムホライゾンに合わせて判断を行うことも重要です。短期的な投資目標と長期的な投資目標では、判断基準やアプローチが異なる場合があります。
最終的な判断は投資家自身の判断に委ねられます。PBRが1以下であるという単一の指標だけでなく、企業の全体像と将来のポテンシャルを包括的に評価することが重要です。
あなたはどう思っただろうか?PCのスイッチをオフにしたくなっただろうか?
まだまだ暑い日が続くようだが、夏の夜の息抜きにAIと対話してみるのはいかがだろうか。