投函者(三井千絵)

5月29日、OECDは2つのぺーパーを発表した。

一つは各国の当局に向けた、“Supporting businesses in financial distress to avoid insolvency during theCOVID-19 crisis”というものだ。OECDは、COVID-19の発生によって引き起こされた企業の財務的危機、つまりこれがなければ健全であった企業の不必要な破産を防ぐために、各国の当局が一時的に取るべき対策について記載されている。ただしこれらの対応を行うためには、市場を開放していることが条件として含まれる、と述べている。

ペーパーでは、どのような場合に政府が支援をするべきであるかについて、例えば債権者の公平な扱いや、即時の現金流出を減らす国家による間接的また直接的なサポート、最近一部の企業でとられた施策であるデッド・エクイティスワップの問題、一時的に国有化しなければならない時などが挙げられ、あわせて回復後の健全な経済のために市場の解放を維持する必要性も述べられている。そして長期的な市場の歪みのリスクを最小限に抑えることの重要性が記載されている。

 

もうひとつは”National corporate governance related initiatives during the COVID-19 crisis”というペーパーというか冊子で、この状況下での各国のコーポレートガバナンスの課題についてのまとめだ。67ページに及び、37か国に対して、1.株主総会の実施状況、2. 企業の倒産および破産のフレームワークに関して取られた又は計画された措置、3.企業開示について取られた措置について、実施された調査結果がまとめられている。

日本についてもそれぞれ記載があり、株主総会については法務省が定款に予定されていた株主総会の期日を変更できることを述べていること、また経済産業省が株主総会を小規模で開催できることを述べていることなどが記載されている。また企業開示においては、ASBJがその第429回企業会計基準委員会において、「会計上の見積もり」において不確実性が高くても、最良の仮定の見積もりを行いそれを開示することを求めたことが記載されている。

 

これらの情報は、感染拡大による外出規制が厳しかったパリの本部でまとめられたのであろうか。日本の箇所をみると、その詳細さが理解できる。非常に貴重な調査であり、各国の状況を比較できる重要なレポートといえるだろう。

先日、香港を本部とするある投資家団体の事務局長は、COVID-19の影響下での減損に関わる開示の勉強会で、”東南アジアの一部の国で、公正価値測定の見直しを免除しているようで、投資家としてはとても心配している”と述べた。今は誰もが海外の対応に直接影響を受ける時代だ。このような過去にない状況であっても、市場だけでなく、ビジネスもお互いに深く繋がっている。

各国の状況を知り、日本では十分に対応ができていたか、さらにできることはないか、このレポートは我々が考えるべき点について示唆を与えてくれるかもしれない。