投函者(三井千絵)

 

夏休みなのでちょっと違った話題を・・・

 

8月が半分過ぎても日々の感染者数は減らず、海外でも一度緩めた自宅待機などの対応を再度厳しくしているところもみられる。はたして本当に来年の今頃、東京でオリンピックを開催することができるのだろうか。旅行、航空産業からカラオケ、劇場、飲食など様々な事業の先行きはあまり明るくない。その一方でゲーム産業などは好調だ。多くの企業がサービスのオンライン化を加速させている。

観光業も必死だ。Go To キャンペーンが不調になったので「おうちで青森」などと地方の特産物の詰め合わせ販売を強化したり、オンライン旅行のサービスを始めた旅行代理店もある。この苦境を打ち破る様々なアイディアが必要だ。また明るい話題もある。多くの企業ではむしろ、何事も起きていなければ達成まで何年もかかったようなデジタルトランスフォーメーションが始まっている。原則テレワーク、オフィス小規模化といった効率化、コスト削減などが次々と導入されている。海外からも揶揄されていたFAX、印鑑文化を卒業し、DXによって企業価値が高まるか、大きく舵を切る時かもしれない。

 

オリンピックも新しいやり方を試す最大のチャンス

この様な中、来年のオリンピックをどのように開催できるかについても様々な意見が交わされている。やはりこうなったからには”普段なら絶対できないオリンピック”にぜひ挑戦してみたい。たとえば「100%バーチャル参加オリンピック」だ。観客は基本的には会場に来ず自宅、あるいは専用の分散された施設で太いネットワークを用意し、最新のPCとVRのゴーグルを用いて観戦する。専用のチケットを買った人だけがアクセスできる”会場サイト”では、リアルタイムで選手と同じ目線で、それこそ会場の土煙がみえるほどのリアルな360度の映像を体験できる様にする。またアプリを使って”隣の席”の人と話もでき、完全に会場にいるような経験ができるようにする。もう1年半も外国旅行を自由にできないことに飽きた人たちは、それくらいの”自宅内設備投資”を厭わないのではないだろうか。バーチャルな”各会場”には旅行代理店が広告を出し、観客は気が向いたらそこからバーチャル旅行を契約できるようにする。湯煙が立ち込める様な温泉街を”歩き”、屋形船に”振られて”東京タワーやレインボーブリッジを眺める。また訪問先では様々な“土産物店”が現われ、”案内役”がインタラクティブに日本の地域や特産品、お土産物の説明をする。ここから先は普通のECシステムだ。購入すれば品物が宅配され世界中で「おうちで日本」を楽しんでもらうことができるだろう。

こんなバーチャル大会の計画をたて、様々な産業に参画を促すのはどうだろうか。上場企業はなんらかの形でこのバーチャルオリンピックへの貢献や参加の仕方を競うよう、投資家が促してもいいかもしれない。そうすればネットワーク、サーバー類など関連設備について需要を喚起でき、また人は移動しなくても、様々な個人単位の国境を超えた売買が活発化するかもしれない。

 

そもそも2020年オリンピックは何かが足りなかった

1964年のオリンピックについては、あくまでも書物や記事、映画などを通してのイメージだが、ものすごい国民的な盛り上がりがあったように感じる。東京タワーができて新幹線が開通し、多くの世帯が安くなかったはずの白黒TVを買った。その5年前の皇太子成婚ではまだTVがある世帯が多くなく、人々は知人宅や街頭のTVを見に集まっていたそうだ。それからわずか数年で飛躍的にTVが普及した。1964年のオリンピックは、会場だけでなく道路や町の整備も行われた。しかし今回はそれほどの力強い変革はみられない。確かにオリンピックに向けて東京都ではバリアフリー化や英語表示の充実は進んでいたし、これらはオリンピックが終わっても直面する高齢化社会への対応、また観光や労働で訪日した外国人にとって住みやすい社会の実現ということで引き続き重要だ。しかし1964年に比べるとずっとささやかだったのではないか。もちろん国家の見栄や不必要なプロパガンダで祭典をゴテゴテに飾る必要はないし、ようはスポーツができれば良いのだが、2020年東京にオリンピックを迎えて一体東京はどうなりたかったのか、あまり強く描かれていなかったように思う。

 

デジタルトランスフォーメーション東京!

1964年と異なり、東京はどちらかというと老いた、人口が減っていく街だ。そしてその経済規模に相応しくないほど、デジタル化が他国に比べて遅れている。PCやスマフォの普及率は高いはずなのに、マイナンバーすら効率的に扱えず、10万円の給付金すら封書でやりとりしている。

それであれば、このオリンピックを都市の壮大なデジタルトランスフォーメーションの機会にするよう、取り組むのは良いアイディアではないだろうか。前述のようなことがいくつか計画されれば、関連する投資が行われるだろうし、「100%バーチャル参加オリンピック」となればオリンピック史を変えるようなイベントになるだろう。世界中から”参加”が可能となるし、会場側も一部の観客の様子が見えると、選手にとって、大きな励みになるかもしれない。電子チケットのグレードによって、ZOOM会議のように、選手から見え、場合によっては直接声をかけられるような仕組みにするのだ。そうすればもともと応援団をたくさん送ることができない国の選手は、普通のオリンピックより、応援団と一体の気持ちになり、より良い成果が出せるかもしれない。DXなオリンピックへの取り組みはコロナ禍転じて、人は物理的に移動できないのに心の国境が低くなり世界がもっと身近になる、そんなことが実現できるかもしれない。

 

・・・といったことを、猛暑の中考えた。国や企業をはげましていくのも、投資家の役割のひとつのように思いながら。