投函者(三井千絵)

 

IFRS財団は昨夜(現地時間12月16日)、国際サステナビリティ基準の初代議長としてEmmanuel Faber氏が就任したことを発表した。Fabor氏は、先日株主利益を優先していないとして株主に解任をされた、元ダノンのCEOであった人物だ。

IFRS財団が目指す国際サステナビリティ基準は、提言された昨年の9月から一貫してシングルマテリアリティ(開示の判断を財務的な重要性におく)を目指している。これ自体は株主主義という意味ではないが、IFRSはこれまでも株主等資金の投資判断に必要な情報を経営者に求めており、投資家保護の立場が強い。そして新基準はIFRSとの一貫性が求められている。これに対し現在欧州委員会が進めている欧州版のサステナビリティ基準は、マルチステークホルダーを重視し、ダブルマテリアリティ(開示の判断を財務的な重要性とESG的な重要性の双方におく)を目指している。従ってFaber氏はむしろ後者に近いように見受けられる。

 

発表から数時間後、海外の投資家や投資家関連団体、開示関連団体にヒアリングしたところ、次のような声が聞かれた。あくまでも現時点での個人的な意見として、紹介したい。

  • スイスの投資家団体関係者 「どうなるだろうね。でも私は異なる意見の人が懐疑心をもって意見を言うことは、ありがたいことだと思う。だいたいISSBは議長だけで決めるわけではなく、理事会や多くの関係者で物事を決めていくのだし」
  • 英国、開示関連NPO 「私のまわりではみなポジティブだ」
  • 米国、開示関連NPO 「みなが良いという人を見つけるのは難しいだろう。正直言って驚いたが、バランスを取ると言う意味では理にかなっていると思う」
  • 日本、投資家 「それは驚いた。投資家の意見を尊重してくれるだろうか」
  • オーストラリア ESGアナリスト「私はダノンのケースを分析したが、彼は強い信念を持っていると思う。それが新しいボードに適しているように思う。全員の意見をまとめるところに彼の能力が試されるかもしれない」

11月3日にISSB(International Sustainability Standard Board; IFRS財団の下に設置する、国際サステナビリティ基準を策定する組織)を設置することが発表されてから1ヶ月半。新議長が発表されたことで、ついに活動が開始したことになる。これから予定通り年明けにはコンサルテーションが行われ、新基準ができていくのか、何かと忙しい年になりそうだ。

このニュースについては、引き続き情報収集し掲載していく予定です。

 

 

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